絶望書店日記

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絶望書店主人推薦本
『冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』
『冤罪と人類 道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』

冤罪、殺人、戦争、テロ、大恐慌。
すべての悲劇の原因は、人間の正しい心だった!
我が身を捨て、無実の少年を死刑から救おうとした刑事。
彼の遺した一冊の書から、人間の本質へ迫る迷宮に迷い込む!
執筆八年!『戦前の少年犯罪』著者が挑む、21世紀の道徳感情論!
戦時に起こった史上最悪の少年犯罪<浜松九人連続殺人事件>。
解決した名刑事が戦後に犯す<二俣事件>など冤罪の数々。
事件に挑戦する日本初のプロファイラー。
内務省と司法省の暗躍がいま初めて暴かれる!
世界のすべてと人の心、さらには昭和史の裏面をも抉るミステリ・ノンフィクション!

※宮崎哲弥氏が本書について熱く語っています。こちらでお聴きください。



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2001/4/6  この姉妹を愛でよ!!

 当店に『サリンジャー選集』の探求書依頼が来まして、この本ならまだ新刊で手に入るんではないかと、初めて荒地出版社のサイトを覗いてみたわけです。
 リストを見るとまだ在庫がある模様で、しかも今時一冊1200円という格安値段で売っているのですな(自社サイトだから大丈夫だとは想いますが、結構この手の表示は当てにならず、ほんとのところは各自問い合わせてください)。
 そんでまた、サイトを眺めているうちに荒地出版社と新人物往来社が姉妹出版社であることを初めて識ってしまったわけです。識らなかったなあ。
 さらにまたまた、AJ−CLUBという仲良く姉妹の頭文字を冠したらしきシステムでは、年会費1000円を徴収して、雑誌も含めて全ての書籍が10%引き、送料は無料でウェブから購入できるという、読者側にも出版社側にも結構なものがあることも初めて識ってしまったわけです。昼の2時までに注文すればその日のうちに発送して翌日には届くというから、なかなか頑張っとる。ペリカン便をつかってるらしいけど、この姉妹だけがやってる独自の販売システムなんですかね。ほかもやってるなら教えてください。
 新人物往来社のような特定ジャンルの固定読者のいる出版社にとっては、リスク無しで儲かって読者も悦ぶ、まことに賢いやり方です。雑誌を毎号買うなら会費も元が取れますし。姉妹にとっての唯一の問題は、インターネット利用者と読者層が完全には重ならない点でして(じつはある程度は重なっている)、いまのところ採算が取れてるのかどうかは怪しいですが。早川書房や創元なんかがやれば確実でよさそうなもんですけど、何でやらないんですかね。

 検索したかぎりではウェブ上ではまったく話題になっておりませんな。
 オンライン新刊書店の話題はあちこち盛んですけど、どうせ全滅するそんなシステムで本を買っても出版界全体にとって何の貢献にもなりません。むしろ、大手取次の延命に手を貸して、本の虐殺を推し進めるだけのことです。『サリンジャー選集』を買いたい読者から見事な手際で隠してしまう虐殺システムを維持するだけのことです。
 出版の行く末が心配で多少なりとも助力をしたいと考えている諸氏は、姉妹がやってるような結構なシステムで本を買うべきです。とりあえずは、話題にくらいせんかっ!!

 佐野眞一の『だれが「本」を殺すのか』とかいうのは読んでいないんですが、今時この手の本を出すとしたら半分はコミケの話になるのが当然のはずがここにある索引を見ると一言も触れていないようだからです。この著者だけではなく、編集者や登場する人物全員が生まれてから一度も本物の本を観たこともなく、本とは何であるかも考えたこともなく、ジャック&ベティかベン&ルーシーあたりに「これは本です」と指し示されたものを本だと疑わずに来たのでしょう。こういう<本のド素人>が本に携わっているわけですから、それは本も死ぬわけです。こういう方々がそろって滅んでくれたらまともな本が出てくることもあるでしょうが、どうなりますことやら。
 あらためて索引を見ると、どうもAJ−CLUBだけではなく、出版社の直販について具体的な考察がまったく無いようですな。あったとしても何が一番肝心な問題かがこの索引を作成したであろう編集者にまったく理解できていないのですから同じではありますが、まあなんせ読んでいないのですからあまり強くは云いませんが、現在の出版のブザマさを身をもって呈している一冊なのでありましょう。

 あたしが出版社から直接買えとしつこく云うのは、売れ筋以外は棚に一度も並べずにそのまま返品してしまうような販売妨害システムに余分なマージンを払う必要はないとか、小さな出版社は本屋で売れてから代金が払い込まれるまで半年もあってとても持たないから直接払ってやれとかいうことだけではありません。
 直接読者とつながることで、少なくとも創り手が<他者>になるという訳の判らんことだけはいくらかでも軽減できることこそ第一の眼目なのです。本とは何であるかを考えるようになる可能性が嫌でも増すのです。とにかく、何冊売れているかさえ誰にも判らない現在のシステムでは、どれほど優秀な創り手でも当てずっぽうに出版するしかありませんからな。編集と営業がいくら離れていようと、いまの無茶苦茶な状況よりは遥かにマシになるのです。
 AJ−CLUBの場合はもっと踏み込んで、月替わりの「バーゲンブックコーナー」があって5割引で買えたりと革命的です。話題になってないのは驚くべきことです。再販制なんて大手の出版社や新聞社だけに恩恵があるもので、この姉妹の勇気ある行動に何らかの圧力が掛かるようなら、読者は立ち上がって死守すべきです!!本の危機に真に憂える者ならば!!

 『歴史読本』なんかにはこのシステムのことは載っておらず、ひょっとすると大手の手先たる再販制支持者に隠れてこっそりとやりたいのかも知れませんが、識ってしまったことは致し方ございません。なんせ、あたくしなぞは<姉妹>と聞いただけで、好いたらしい想いがウッと込み上げてきて、もう辛抱たまりません。やはり愛でるには間に<人と人とを隔てるもの>を被せたりせずに、ナマが一番ですなあナマが!!
 皆様方にもぜひ、ナマで直接撫で廻していただきたい。撫でれば撫でるほど、姉妹の感度もますます高まることでしょう。
 本物の本が復活するにはもうこれしかございませんよ。ほかの出版社の方々も死ぬのがお嫌なら、姉妹のあとに続いて感度を磨くことですな。死にたいのであれば、無理にはおとめいたしませんが。


2001/3/23  本よ!流れにのみ顯現す儚き命よ!!

 倒産した光琳社の本がブックオフ各店に山積みになっておりまして、よくもまあ、中身の空っぽなくだらない本をこれだけ幾つも出したもんであるなあと皮肉ではなく心底感心したようなわけですが、定価の1/10というまあまあ適正な価格がついていたおかげで飛ぶようにして売り切れてしまいました。
 なかには当方が探求書依頼を受けて見つけられなかった本が大量に並んでいたりして、いまの新刊流通の奇々怪々は絶望書店主人の能力を遥かに超えた処にあることをあらためて思い知らされたりもしたわけです。
 光琳社の場合は単純に本の売上げだけではない事情が裏にあるようなないようなよくは識りませんが、一般的にこれだけの勢いで在庫が捌ければ倒産などということはあり得ませんわな。値段だけの問題ではないことは、かなりの割合を業者が買っていたことでも判るはずですが。何割かでも回収できていれば潰れる前にもう一冊は出せたわけですし。
 本が流れていないだけではなく、情報がプロの間でさえ流れていないということです。ブックオフに頼るしかないということです。
 ブックオフを非難している方々はこういうことをどのような具合に観ているのでしょうか。印税をもらえないで、ひとが儲けるくらいなら本を燃やしてしまったほうがよいとやはり考えているのでしょうか。

 ペヨトルなんかもわざわざ大金払って在庫を裁断処分するより1/10価格でブックオフに並べたら、『夜想』やら何やらの中身の空っぽなくだらない屑本でも奇特な方が手に取って魂を吹き込んでくれることもあるやも知れぬというのに。とにかく流せば何かが起こることもあり得る。本とはそういうものでしょうに。光琳社の本だって、生まれて初めて眼にした方のほうが多かったはずです。
 そもそもなんでそのような選択になるのだろうと一年近くぶりにペヨトル工房のサイトを覗いてみれば「解散日記」が驚くべきことに!!まだ続いてて、ますます酷いことになっておる!!本とは何ぞ!?で嗤ってた頃は、死んで逝く身なのだからまあ多少は見苦しい見当はずれの愚痴も致し方ないかと想っておったのだが、いくらなんでもどうなっておるのだ!?
 アマゾンなんかから本のデータを提供してほしいとわざわざ頼んできているのに、拒否してデータの間違いを怒ったりしている。情報くらい云われる前に流さんかい!!相手から拒否されても押し込まんかい!!
 bk1に対しても「どういう紹介文がつくのか楽しみだ」とか云ってる。おのれが書かんかい!!おのれがっ!!!拒否されても拒否されてもスパムの如くに書き続けんかい!!!!!
 いったい出版というものを何だと想っておるのだ!?四角い紙の束を拵えることか!?

 昭和5年の『キング』に載った乱歩の単行本『蜘蛛男』の広告に畏れひれ伏せ!!!これはおそらく編集者の手になるものであろう。広告屋だったとしても依頼されただけの&lt;他者&gt;の仕事ではなく一体となっておるのだから同じことだ。これが出版と云うものだ!!!乱歩の原稿を豆腐のように四角く纏めただけではない!!!たとえ中身の空っぽなくだらない本であったとしても、これだけの迸る熱量を読者にぶつけることができるのなら、それは中身とは独立に屹立す確固たるひとつの出版なのだ!!!こちらの方が出版の本筋なのだ!!!
 本とは流体であるからだ!!!!運動体であるからだ!!!!ひとたび留まれば、乱歩の名作であろうがなんであろうが、それは絶対に本ではなくなるからだ!!!!情報を流すことを怠ったり、裁断処理したりといった選択があり得るはずがない!!!!それは四角い紙の束を本だと想っている&lt;本のド素人&gt;の所作である!!!!!流通こそがすべてなのだ!!!!!!!たとえタダでもなんでも流してしまえっっ!!!!!!!!
 いつまでもゾンビの如く解散などとほざいて本の流れを遮っているお前より、自らを虚しくして本の流動と生命を刹那でも甦らせた光琳社のほうが正しき姿ではないの哉!?ほんとに違うと云うの哉!?
 裁断というのは新たなる本と新たなる流れを生み出すためだけにやむなく流れの滞りを断ち切るもので、それ以外たとえなにごとであろうと赦されざるべきはずではないの哉!?ましてや、新たなる本を生み出すことを自ら放棄した者が、逆に流れを塞き止めるための裁断だとお!!!!!!?
 世界の出版史上、これほど破廉恥な行いが爲されし例が他にあるのか!!!!!!!!!いったい本というものを何だと想っておるのだ!!!!!!!!!&lt;文化支援&gt;とかいうので&lt;他者&gt;の出版をしてきたからできることではないのか!!!!!!!!!申し込んできた者にはすべての出版物をタダで配った八切止夫の最後の態度を何と視るかあ!!!!!!!!!

 とにかく本を焚す奴はすべて本の敵だ!!少なくとも絶望書店の敵だ!!こういう輩は、早いとこみんな消えてなくなってしまいなさい。
 判りましたネ。


2001/3/5  君よ!少年犯罪を識っているのか!?

 少年犯罪のデータベースを構築せよと呼びかけても誰もやらぬようであるし、もっともしっかりしたデータを載せて唯一の頼りとなっていた松江警察署の「少年犯罪を考える」のページまでいつの間にか無くなってしまい(どうなったのかご存じの方はご教示を)、しようがないので当方が新聞記事をもとに1964年分だけ纏めてみました。こちらです。
 たとえば「杉並切り裂きジャック」は性器を切断するなどの小学生男児だけを狙った犯行を11件起こしたうえに警察や被害者宅につぎつぎと挑戦状を送りつけ、また少年の模倣犯と想われる子供へのいたずら暴力事件が同時期に10件以上起きたのですが、このリストではひとつにしています。また、ひとつの事件にひとつの記事だけということはありませんから、いまほど扇情的な報道ではないにも関わらず、少年犯罪がほんとに連日紙面を賑わしていたわけです。
 よくもまあ、これだけのことを忘却することができるもんです。

 リストの「中学生風」などという表記は結局捕まってないからはっきりとは断定できないわけですが、目撃者がいれば概ね少年かどうかくらいは判断できますな。しかし、都立大学法学部教授の前田雅英という方は法律の研究者なのに非常にさばけておられるらしく、そんな目撃証言をひとつひとつ精査などしないで、最近は検挙率が半分に減っているので統計を2倍に&lt;補正&gt;すればいいじゃないかと、小学生にも判り易い画期的な理論を提唱され、その2倍にした数字をもとに現在の少年犯罪数は戦後最高と仰っておられます。
 きっと前田先生の天才的な頭脳は事例のひとつひとつに当たることなく数字だけで少年犯罪を研究する画期的なメソッドを編み出されたのだろうと愚考いたします。でも、凡夫がこのリストを見ると、どうしても2倍じゃ足りないような気がするんです。先生!素晴らしい理論によってもっともっと&lt;補正&gt;してえ!!

 そんな前田先生の&lt;補正&gt;がない統計では、この1964年から現在は凶悪事件で5分の1くらいに減ってしまったことになっております。確かに数はそうなんですが、すべての記事に眼を通した実感といたしましては、やはり&lt;補正&gt;を入れたほうがいいような気がいたします。なにせ、あまりに残虐あまりに訳の判らん事件が昔は多く、いまの若いもんには少なくとも10倍以上は頑張ってもらわないととても追いつきません。まあ、リストを見てください。
 現在の50代60代はもっとも数多くの殘忍極まる少年犯罪を犯してきた世代なんですが、いまでも重大な犯罪はだいたいこの世代が請け負っています。犯罪だけではなく、世の中を滅茶苦茶にして責任も取らず、問題をすべて先送りにして若い世代に押しつけ、しかも、何か若い者のほうが悪いと本気で信じているらしい。
 この世代はいまと違ってまともな躾を受けておらずきちんとした社会的規範を身に着けていないということがあるのですが、どうもそれだけじゃなく、これだけ切れやすいのは脳になんらかの障碍が生じているのではないでしょうか。
 DDTなんかをまともに頭からかぶっていますし、その他もろもろの有害物質を大量に体内に取り込んでいる人類史上例を見ない大規模な人体実験を施された世代です。何の変異も生じないなんてことがあるはずないのです。学者の皆様にはぜひとも研究していただきたい課題です。世界的に注目されますよ。

 また、この1964年をピークとして少年犯罪は急激に減少していくわけですが、最近ジェイコム君のおかげで昔のテレビ番組を観る機会の増えた当方には、どうも子供向けのメディアに残虐シーンや性的シーンが増えるに従って子供の暴力性が減っているように感じられます。『カムイ外伝』なんかいま観ても凄まじいですからな。
 増加する一方だった米国の少年犯罪も5年ほど前から減少に転じたのですが、ゲームや日本のアニメによって子供たちが暴力シーンに触れる機会が増えたことと関連があるのかも知れません。
 少なくとも、残虐シーンによって子供の暴力性が増すなどという説よりは、こちらのほうが統計に合致しております。なぜ、こんな判りやすいことに誰も疑問を持たぬのでしょうか。学者の皆様にはぜひとも研究していただきたい課題です。世界的に注目されますよ。

 それにいたしましても、なにゆえ当方のような者がこんなリストを作成しなくてはならぬのでありましょうかな。
 新聞社はもうそろそろいいかげん&lt;便所の落書き&gt;を刷り続けることはやめて、過去のデータをきっちり整理してもらいたいもんです。同じ落書きでも昔のほうが幾らかマシで、ネットのない時代のものはなんせ代わりがありませんから、こうして役にも立ちますからな。
 もっとも、このリストにあるような内容は全部よそからもらってきたもので、昔の事件さえも識らずにジャーナリストとか名乗っている&lt;便所の落書き&gt;書き屋さんの低脳さが反映されていないからでもあるんですが。
 とりあえず、自分とこの社員には自分とこのバックナンバーくらい全部読ませる教育はやりなさい。判りましたネ。

 附記
 サルベージされた「少年犯罪を考える」のミラーサイト!!とくに時代順のデータは順番に読むように!!昔は酷い事件がじつに多い!!
 また消滅するやも知れぬので、いまのうちにデータを保存し、受け継いでいくように!!


2001/2/25  ブラック・ジャックの素

 いまファミリー劇場で丹波哲郎・主演の『ジキルとハイド』という何とも形容のし難い凄まじいドラマをやっているんです。
 医者の慈木留(ジキル)が薬で変身して殺すは犯すは極悪非道の限りをつくすわけですが、このハイドの暗い姿格好がブラック・ジャックそのものでして、いつも白衣を着ている白髪の慈木留と左右半々に合成されるオープニングはもうそのまんまでして。少なくとも、加山雄三よりも宍戸錠よりも本木雅弘よりも出崎統アニメのブラック・ジャックなんかよりも遥かにぴったり重なります。
 ああ、手塚さんは確実にこれを観てるな、ブラック・ジャックの素が丹波哲郎とはこりゃまた驚いたもんだなと調べてみたれば『ジキルとハイド』の放映終了が1973年の4/24で、『ブラック・ジャック』の連載開始がその半年後の11/19号なんですな。

 『ジキルとハイド』は1969年製作なんですが、あまりに殘虐かつシュールな内容でお蔵入りになり、やっと三年以上経ってから23:15~00:15という当時としては異例な深夜かつ半端な時間帯に一度だけ放映し、地上波ではその後まったく流されなかったといういわくつきのドラマであります。
 『人造人間キカイダー』の長坂秀佳がシリーズ構成をやっているんですが、さもありなんといった出来でして、なんせ時代が時代ですからさらに輪を掛けてサイケな絵づくりとなっております。いま観ても、お蔵入りは充分うなずけます。
 露口茂が血の気の多い刑事役で出てきたり、もういい歳の松尾嘉代のセーラー服姿が拝めたり、池田昌子が乱暴されながらも悦んでしまう人妻だったり、もちろん丹波哲郎のイッてしまった怪演とたまらん観処満載で、これだけでファミリー劇場と契約する価値はありますな。

 そんな丹波哲郎の導きで、ジキル博士とハイド氏のふたりの分身をさらにもう一度ひとりに合体させたのがブラック・ジャックだということに、たったいま初めて気付いてしまいました。だからこそ、髪や顔が白黒半々の姿をしていて、名前が間(はざま)だったんですな。だからこそ、恐怖コミックスだったのですな。
 こんな簡単なことに、あたくしはいままでなんで気付かなかったのですかな。皆様には衆智のことだったのでしょうか。近所の図書館で読むことのできる20冊ほどの手塚治虫研究書に眼を通してみましたが、どうも見当たらないのですが。手塚治虫自身のハイドだというような捉え方はありますが、これは明らかに誤りですな。両極端な性格を併せ持っていた手塚治虫の投影だというのなら、まだしも判りますが。
 手塚さんはブラック・ジャックは海賊のことだとかなんとか云ってますが、どう考えてみても両性具有ならぬ両性格具有の<黒いジキル>から来ているのでしょうな。第一回目の扉絵はふたつの貌を持つトランプのジャックですし。
 ほかの人のブラック・ジャックよりも丹波哲郎のほうが近いと感じるのは、きちんとこの主題を踏まえているからなんでしょう。

 而して、こんなことに気付いてもただ虚しいだけです。
 あたくしはドストエフスキー云うところの「両方の岸がひとつに出逢ってすべての矛盾がひとつに棲む」「聖母とソドムを併せ持つ」という完璧な人間描写を史上初めて爲し遂げたのは古今東西あまたの物語のなかで『ブラック・ジャック』、それもこの主人公ひとりだけであると常々考え感歎していたのですが。種明かしをしてみれば簡単なことで、なあんだという感じがあります。
 まったく困ったことでして、完成した作品をこんなふうに部品に分解して分析してみても、理解したということにはなりません。まさしく寿司屋のアナゴの一種に過ぎません。美女の骸骨をわざわざ視て、永年抱いていた大切な想いまで永遠に失ってしまったようで、情けないことであります。

 さはさりながら、『ジキル博士とハイド氏』の主題は変身なんかしないで一個の人格に結晶させたほうがより複雑に深遠になるというのはコロンブスの卵で、ほかにありそうでなかなか見当たりません。悪人が善人を装ったり、また善人が悪に染まったりといった話はありますが、それらはすべて変身の一種で、同時にふたつの性格をドストエフスキー的に内在するのはブラック・ジャックしかあたしには想いつきません。ドストエフスキーの登場人物さえこれほど完璧なる造型ではありません。
 デビュー以来飽くことなくメタモルフォーゼを描き続けた手塚治虫が、虫プロが潰れて究極のメタモルフォーゼたるアニメに挫折したまさしくその年、引退記念とも囁かれた『ブラック・ジャック』に於いて、変身とは反対のベクトルである<逆ドッペルゲンガー>を描いたのは必然なのでしょう。
 それがおそらく想ってもみなかったコロンブスの卵、ヒョウタンツギからコマを生み落としてしまった。手塚治虫生涯のテーマに逆叛(あるいは濃縮)するこの主人公が、皮肉なことに矛盾した両極端な性格を併せ持つ手塚治虫自身の投影ともなってしまった。おまけに、大人と子供を併せ持ちながらも決して変身しない<ふしぎな逆メルモちゃん>であるピノコまで生み出してしまい、こちらのほうは矛盾ではなく理想の完全体として女性からは憧憬されているらしい。
 丹波哲郎の靈氣や恐るべし!三年間のお蔵入りがなかったら、これらすべてが地上に存しなかったのやも知れぬのですからな。

 まあ、こんな詰まらん分析をしているうちに、ヒューマニズム云々だけではなく世間一般のキリコとブラック・ジャックとの対比の仕方にこれまでどうも違和感を感じていたのは何故なのかが判ってすっきりといたしました。<寿司屋のアナゴ>談義も多少は役に立ちます。

 ところで、ウェブ上では『ブラック・ジャック』の連載開始を1/19号と間違えて記しているページがあまりにも多いですな(間違えているとこのが多い!明らかにウイルス状に増殖しておる!)。週刊誌の実際の販売日は一週間前ですから、これでは『ジキルとハイド』の放映開始日1/9とぴったり重なってしまいます。
 「すわっ!シンクロニシティーかあ!?」とあたしが仰天しますので、これ以上拡がる前に皆で手分けして訂正させなさい。あーびっくりした。

4/24 ブラック・ジャックの素2も参照のこと。
 
 
※2006年12月27日(水)の深夜0時から、ファミリー劇場で『ジキルとハイド』全13話一挙放映が決まったようです。
女房を売り飛ばしてでも観るべし!!!!
すんごいよ。とくにブラック・ジャックのアニメやドラマを制作するスタッフは刮目して観るように!!!出崎さんなんかにもちゃんと観てほしい。
 
   


2001/2/17  フシアナか!?

 いま絶望書店のいち押しは「バッタもんの白雪姫」イラスト、「宇宙探偵」「樟蔭學報」の表紙画像であるのだが、ほとんどひとりも辿り着いておらぬ。諸氏の節穴は眸か!?タコやハリウオほどの感覚器官も備えておらぬのか!?まことに嘆かわしきかぎりである!!
 絶望者としての日頃の鍛錬がなっていない証左である!!爾後、怠惰なる心を入れ替え、絶望者として相応しき嗅覚を磨くべく精進を怠らぬように!!

 絶望書店は開店以来の3年間、すべて合わせて僅か2メガという俄には信じ難き人智を越えたる容量であれだけのページを構築してきた。文字通りの神業、ハイテクの極みと云って過言ではないであろう。生半可な能力でこなせることではない。
 拡大路線に転換してから、日記をつけたり画像を増やしたりいろいろやってきたが、先頃アップルの見事なるバレンタイン奇襲を受け、当初原因が判らず、それまでしこしこ溜め込んできた外部記憶まで読み込まなくなったため、念のため整理しながらバックアップを取ってみたれば、未だに4メガしかないことが判明した!!商用サイトとしてはまさしく奇蹟に准えるが如くに破格である!!厳しく己を律する貧乏性が育んだ、真実の力の発現である!!

 ヒトの能力の限界に挑んだ、かほどまでコンパクトなる容量すべてを読み込むことさえできずして何とする哉!!!?絶望書店に触れずとも良き場なぞ、ひと缺片も存せぬ!!!!!あらゆるページあらゆる文章あらゆる画像あらゆるビット、いずれを斬ってもたちまち煮え滾きし鮮血迸り、諸氏らを深き絶望の淵に陷れるは必定である!!!!!!隅々まで徒や疎かにはせず、ありがたく繙読するように!!!!!!!!!!

 さても、てっきりお久しぶりの機能拡張の搗合いだと想って嬉々として半日掛かりで復旧したのに、これがアップルが放ちしトロイの木馬であるのなら、うちのマシンは一年半まったく一度もトラブルなしということになる。昔のマックを識る者にはこっちのほうが薄気味悪いな。大丈夫かいな。ためにわざわざトラブルを遣わしましたかな。



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