2002/4/19 大鴉、訪なわず!
絶望書店はまことに細々とした商いを営んでいて日々の注文などは微々たるものなのだが、何故かうまい具合に分散していてこの何年かは注文が途切れることなど滅多になかった。それが今月になってじつに10日間に渡ってひとつの注文もない日が続いたのである!!
苦戦を強いられし開店当初でもこれほどまでに長期の御茶挽きはなく、いよいよ絶望書店もお終いか正義はやはりあったかと唇辺に微笑を以て事態に臨んでおった。
こうなると喰う道を見つけなければならぬ。かと云ってほかに収入を得るほどの甲斐性があるわけでもなく、論理的帰結として収入ゼロを前提とする喰う道を見つけなければならぬ。
いろいろ調べてみて、カラスは喰えるということが判った。しかも、うまいらしい!臭いのきついハシブトカラスもミルクに漬けると臭いは消えるということが判った。しかも、うまいらしい!
およそタダで口にできるものは何でも喰い、ゴミ捨て場では残飯を争ってカラスと死闘を演じてきたこの絶望書店主人であったが、不覚にもカラスを喰うことだけは想い至らなかった。もっとも単純なる外見に惑わされ御馳走を見逃していたとは、己の思考能力の不甲斐なさ浅はかさに涙が出る。ああ、あたしはなんでもっときちんと勉強をしておかなかったのか。
ともかく、カラスが喰えるとなるともう一生喰うには困らない。早速試してみねばなるまい。
・・・と想ったらあれほど群がっていたカラスが近所には一匹もおらんではないか!いったいどこに行ってしまったのか!あたしには青島幸男以上になにをやってるのかよく判らん石原慎太郎のこれが唯一の成果なのか?!
このまま座して飢え死にを待つよりほかないかと覚悟を決めていたのだが、11日目からまた注文が入るようになり、どうも月の売り上げとしてはいつもとあんまり変わらないレベルまで持ち直してきた。
あたしは何が気に入らんと云ってここまで見事に売り上げが分散していることである。網羅的な品揃えでせめて一日百件以上も注文があれば判らんこともないのだが、極めて少ない偏った商品でしかも一冊売れると売り切れという有り様で一日の注文も極めて少ないのに毎日の注文数は見事に分散されて月々の売上高も見事に揃っている。常連だけが買っているのならまだしも、9割以上が新規客で残りのリピーターも定期的に買っているわけではない。
さらに云うとページのアクセス数がこれまた見事に毎日揃っている。一日1,2件のアクセスしかないページは毎日1,2件のアクセスがあり、5,6件のページは毎日5,6件、10件のページは毎日10件前後、100件のページは毎日100件前後、現在80ほどあるページの悉くが不気味なまでに揃っている。
新たにリンクを張られると一時的に伸びるがすぐに元に戻る。または一段階上のアクセス数のまま安定する。こちらは定期的にやってくる常連がいるが、圧倒的に多いリンクや検索エンジンでやってくる新規者とまざりあって一日単位で綺麗に分散する。検索キーワードもほぼ一定の数が毎日並ぶ。
あたしは昔からサイコロの目が1/6の確率で出るという話を疑っていた。そんな莫迦なことがあるはずがない!ところが10年前くらいにサイコロをえんえん何千回と転がすというのをテレビでやっていて観ていたら、ほんとに1/6に近づいてゆく!なんでこんな不合理なことが起きるのだ!!!!!
本をいろいろ読んでみてもあたしの頭ではどうもよく判らない。もっともサイコロの場合は1/6に近づくまで転がしてその段階でやめてしまうので、ほんとのところは判ったもんではないといまでも想っているのだが。(いまちょっと想い付いたけど、確率をリーマン幾何学みたいにいろんな具合に歪めて計算したら宇宙のいろんなことももっと判るような気がするけど、やっぱりすでにやってるんですかね?)
サイコロはともかく、絶望書店の注文数やアクセス数などという人間の行動、しかも極めて数の少ないウェブ全体から観たら塵以下の数値がなにゆえここまで揃うのか。絶望書店のなかでさえ塵以下の数値のページのアクセス数がなにゆえここまで揃うのか。確率とか統計とかあたしはまったく理解していないのだが、なにゆえこんなことが起こるのか???
ひと月の統計を取ると傾向が見えるというのではなく、きのうと今日とがあきらかに重なる。つねにあと十倍転がしたらどうなるか判ったものではないサイコロとは訳が違って言い訳が効かない。
これはもう、おまえのやっていることは宇宙の単調で醜い不合理なる秩序の一端にしか過ぎぬと嘲笑を浴びせかけられているのだ!絶望だのなんだの云っても、駆除されしカラスほどの害さえ及ぼすことのできぬ無力なる存在であると!
十日間の注文の途切れは絶望書店開闢以来初めての秩序の亀裂で、いよいよ宇宙に罅を走らせたか!と歓喜したのだが・・・・・。また何事もなかったかのように元に戻ってしまった。
はたしてあたしがあのうまそうなカラスを喰える日は到来するのであろうか?
大鴉は窓を叩いただけで肝心のセリフも云わずに去っていってしまった。いや、あれはほんとうに大鴉だったのであろうか?
もしや、あの・・・・・
絶望書店日記 